著者
中野 里美
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 文学篇 (ISSN:03896072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.281-290, 1993-02-15

1893年にサンフランシスコで殺人事件が起こった。「コリンズという労働者が、妻と別居中に、その妻を幼稚園の控え室で刺し殺したというもので、妻は雑役婦であったが、夫に金を渡すのを拒んだ」という内容である。この事件を基にして書かれたフランク・ノリス(1870~1902)の『マクティーグ』(1899)は、ハーヴァード大学在学中におけるゲイツ教授の授業の課題作文から生まれたものである。ノリスの属する自然主義の小説に見られる人間像は「人間存在の全体はいたずらに悲劇的だ、そう彼は言っているかに見える。人間の男女には真に選択する力はない。彼等は苦しむために生まれるが、ギリシア悲劇のヒーローのような高貴な諦念があるわけではない」と表される。なぜ自然主義小説の登場人物が悲劇的で苦悩の人生を送らねばならないか。それは「人間に自由意思はない、外部と内部の力、環境や遺伝が人間を支配し、その行動を決定する」からである。

言及状況

Twitter (2 users, 2 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 文明的劣等感、喪失感の作用-フランク・ノリスの『マクティーグ』-(中野里美),1993 http://id.CiNii.jp/IJCtM

収集済み URL リスト