- 著者
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中尾 真理
- 出版者
- 奈良大学
- 雑誌
- 奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.p33-48, 1994-03
アン・エリオットは「洗練された知性」と「優しい性格」の持ち主として描かれている。「洗練された知性」とは何を意味するのだろうか。オースティンは従来から「理性」と「感性」のバランスのとれた精神を理想としてきたが、それとどこが違うのだろうか。以上の観点から、オースティン最後の作品『説得』について考察する。ヒロインは家族からも、コミュニティからも切り離され、孤独の内に移動を続ける。斜陽の准男爵家から、大家族の暖かい雰囲気を残す郷士(スクワイア)のマスグローヴ家、ライム海岸、そして、最後にエレガントな温泉保養都市バースへの孤独な旅の過程で、アンの洗練された知性はそれぞれのグループにどのように反応し、また、どのようにして心からの共感者であるウェントワース大佐の心を掴むことができたのだろうか。鍵はやはり、感性とモラルに求めるべきだろう。