- 著者
-
中尾 真理
- 出版者
- 奈良大学
- 雑誌
- 奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
- 巻号頁・発行日
- no.34, pp.33-44, 2006-03
T.S.エリオットの子供向けの詩集『ポッサムおじさんの現実味のある猫の本』と、その中の「謎の猫マカヴィティ」をとりあげる。エリオットはこの詩集でも、『不思議の国のアリス』や『マザー・グース』から親しみのある言葉やリズムを効果的に利用している。ここに登場する猫たちは擬人化されているが、いかにもロンドンの猫らしく、泥棒猫、手品師猫、鉄道猫など、その生態もさまざまである。その中で、「謎の猫マカヴィティ」には、コナン・ドイルの有名な探偵小説を下敷きにし、猫の正体を問う謎々が仕掛けられている。手がかりはこの猫が「犯罪のナポレオン」と呼ばれていること。本稿は「謎の猫マカヴィティ」を読み、エリオットらしい諧謔に満ちたノンセンス詩に仕掛けられた謎を解く。「ポッサムおじさん」の仮面に隠された大詩人の知られざる一面に近づくための覚え書きである。