著者
山田 隆敏
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.21-35, 2008-03

Catherine の誇り高くて激しい気性、それに引き換え、Heathcliffの飽くことなき復讐への執念、それら両者の激しき激情・怨念が、この作品の全編に亘って流されている。まさに天高く舞い上がる「嵐」のように、彼らの根源的な愛の権化に起因する残忍さ・エゴイズム、そして不条理的な愚かしさが、全編にあまねく表現されている。善と悪(愛と憎しみ)の相克的な所業が展開され、人間同士のどうしようもない性(さが)の嵐が繰り広げられているのである。このような精神面の矛盾さと、Heathに代表される陰気な自然現象が、一体化されて内容に独特な陰影を与えている。21世紀の今日、この独特な陰影を帯びた作品内容は、我々に力強い衝撃を与え、人間としての生き方そのものについて思考させずにはいられない作品に仕上がっている。また、時間と空間を超越した普遍性に永遠性を与える作品構成に仕上がっているのである。異常な復讐心を有する主人公Heathcliffを登場させることによって、一般的な愛とか執念が、どのように「憎しみ」に転化するかを述べてみたい。さらに、「憎しみ」が愛のジャンルの転嫁であるかを、時代性を問わない森羅万象の普遍的観念論として述べてみたい。

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