- 著者
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青木 芳夫
- 出版者
- 奈良大学
- 雑誌
- 奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
- 巻号頁・発行日
- no.32, pp.51-65, 2004-03
筆者は、現在、『グレゴリオ・コンドリ・ママー二自伝』を日本語に翻訳しているところである。グレゴリオは、20世紀前半の、まだ半封建的な風習が残るペルー・アンデスの農村で孤児として育ち、やがてクスコ市内に移住するが、晩年の1960・70年代には一介の荷担ぎ人夫として暮らした。自らの辛酸の数々を伝えるために、その生涯を若き人類学者のバルデラマらに語る決心をした。この『自伝』は単なるオーラル・ヒストリーではなく、自らの経験をも伝承風に語れる、稀代の語り部、グレゴリオを得たことにより、口頭伝承の宝庫ともなっている。本稿では、その伝承を「アンデスの自然」「アンデスの神々」「牛泥棒」「スペイン人・キリスト教・文明」に分類し、紹介する。