著者
中馬 充子
出版者
大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター
雑誌
学校危機とメンタルケア (ISSN:1883745X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.21-32, 2011-03-31

本論は、我国において安全運動の世界を切り開こうとした安全第一協会機関誌『安全第一』の安全思想史上での位置づけを、曾頭内田嘉吉の安全観に基づいて考察することを試みるものである。安全運動が始まった1910年代に、従来の社会通念即ち、事故は本人の不注意によってのみ起こるという考え方は修正され、事故が起こる原因を他に求める意識改革のなかで、安全第一協会機関誌『安全第一』の主張は、以下の諸点で先見性が高く先駆的であったと評価できる。1確率は低くとも事故は起こり得るものとして、事故彙報と統計表を多用することにより、情緒的議論を排し、論理的な議論のできる場を提供した。2物質的安全装置と精神的教養の必要性を指摘すると共に、富国強兵を意図しながらも共同の利益を求めようとした。3小学校期から安全思想を育むことの重要性を指摘した。

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