- 著者
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矢守 克也
- 出版者
- 奈良大学大学院
- 雑誌
- 奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.331-358, 2002-03
本研究は、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)にともなう体験の記憶とその伝達をめぐって筆者が展開してきた一連研究の一部である。本研究では、震災に関連して建設された博物館が果たす心理・社会的機能について論じる。具体的には、震災後3年を経て、同震災を引き起こした震源断層である野島断層(兵庫県淡路島)の保存を主たる目的として建設された「北淡町震災記念公園(野島断層保存館)」をとりあげた。まず、同施設の建設経緯、施設展示・運営内容に関する事実経過、客観的事実・現状について集約した(Ⅱ節)。次に、筆者自身のフィールドワーク(現場観察、スタッフや見学者に対するインタビューなど)に基づいて、同施設の運営に携わる人々(館内スタッフや語り部の人々)、および、そこを訪れる人々が示す態度、行動上の特徴について列記した。あわせて、Ⅱ節で報告した個々の展示内容が果たしていると思われる機能についても言及した(Ⅲ節)。最後に、Ⅳ節では、以上の2節を踏まえて、同施設が阪神・淡路大震災の記憶とその伝達に果たす役割、および、問題点、ひいては、博物館一般が現実的な出来事の記憶とその伝達に果たす役割、および、問題点について考察を加えた。