- 著者
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関本 安孝
- 出版者
- 明治大学政経資料センター
- 雑誌
- 資料センターニュース
- 巻号頁・発行日
- vol.1989, pp.16-18, 1989-07-20
中村先生がお亡くなりになって間もなく1年の月日が流れようとしているが、まだ音容日々遠しの感はない。政経事務室から計報の電話がはいったのは昨年8月2日の昼ごろであった。耳を疑い、聞き返さずにはいられなかった。まさに晴天の露震の思いで、昼食が喉を通らなかったことを思いだす。中村先生に初めてお目にかかったのは、昭和33年4月であった。私が大学院に入学し、関未代策先生の経済学史の授業に出始めたときである。中村先生は同年3月修士課程を終了し、関先生の助手になられたので、経済学史の授業にはオブザーバーとして出てこられたからである。演習の授業で使われたテキストは『国富論』(原典と訳書)であったが、中村先生の訳書の余白には注釈と思われるものが小さい字でびっしり書き込まれており、相当な勉強家に違いないというのが私の第一印象であった。