著者
藤原 怜子
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.116, pp.171-188,

2009年のニューイヤー・コンサートで一石を投じたバレンボイムのウィーン伝統音楽の見直しについて、その歴史的意味を考察する。シュトラウスの時代にはなかったウィンナ・ワルツのリズム上の魅惑的な溜めはどのように醸成されたのか。ウィーンの舞踏文化とクラシック界の現状を探りながら、ウィーンの人々にとって、あるいは観光客にとって、そしてメディアの向こうにいる世界中のファンにとって、振り撒かれる魅力の根源に迫る。毎年選出される新たな世界的指揮者のなかで、古楽出身のアーノンクールが目指す真のウィーン伝統音楽の再生は、多くの人々に刺激を与え、その成果が期待されるところである。甘く美しくなりすぎたウィンナ・ワルツに新たな解釈が加わることによって、新生ウィーンの音楽が生れる日は近い。

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