著者
田子 泰彦
出版者
富山県水産試験場
雑誌
富山県水産試験場研究論文 = Special report (ISSN:1347927X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-151, 2002-12

また、各地の河川へ放流された湖産アユは生態学、形態学および遺伝学的見地からも、一代限りで、再生産に寄与していないことが指摘されている。さらに、湖産アユには冷水病の蔓延による健苗性の低下などにより、友釣りのオトリを追わないアユが多くなったなどの問題が指摘されるようになった。人工種苗においても魚の形態や放流後の分散などの問題が一部にある。さらに、最近では水鳥のカワウの被害の拡大が報告されるなど、アユを取りまく状況は年々悪化している。このような状況に直面して、最近では特に海産遡上アユ資源の増大を望む声が高くなってきている。アユ資源を増大させるには、海産アユ資源を増大させるとともに、実際の漁場におけるアユの生息環境(河川環境)の改善と資源管理(漁業規制)を的確に行う必要がある。海産アユ資源を増やすためには、その生態を明らかにし、それに基づいた仔稚魚の保護対策や増殖手法を確立することが重要と考えられる。また、資源管理に際しては、アユと生息域および漁場を競合するサクラマスの生態や資源管理にも配慮する必要があると考えられる。

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