著者
田子 泰彦
出版者
富山県水産試験場
雑誌
富山県水産試験場研究論文 = Special report (ISSN:1347927X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-151, 2002-12

また、各地の河川へ放流された湖産アユは生態学、形態学および遺伝学的見地からも、一代限りで、再生産に寄与していないことが指摘されている。さらに、湖産アユには冷水病の蔓延による健苗性の低下などにより、友釣りのオトリを追わないアユが多くなったなどの問題が指摘されるようになった。人工種苗においても魚の形態や放流後の分散などの問題が一部にある。さらに、最近では水鳥のカワウの被害の拡大が報告されるなど、アユを取りまく状況は年々悪化している。このような状況に直面して、最近では特に海産遡上アユ資源の増大を望む声が高くなってきている。アユ資源を増大させるには、海産アユ資源を増大させるとともに、実際の漁場におけるアユの生息環境(河川環境)の改善と資源管理(漁業規制)を的確に行う必要がある。海産アユ資源を増やすためには、その生態を明らかにし、それに基づいた仔稚魚の保護対策や増殖手法を確立することが重要と考えられる。また、資源管理に際しては、アユと生息域および漁場を競合するサクラマスの生態や資源管理にも配慮する必要があると考えられる。
著者
藤田 大介 瀬戸 陽一
出版者
富山県水産試験場
巻号頁・発行日
no.12, pp.19-31, 2000 (Released:2011-03-05)
著者
田子 泰彦
出版者
富山県水産試験場
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-10, 2004 (Released:2011-03-05)

降海期におけるサクラマス幼魚によるサケ稚魚の補食実態を明らかにするために、1995年と1996年の3月に飼育池において補食試験を行った。サクラマス幼魚によるサケ稚魚の補食率と平均補食尾数は、1995年ではパーが45.1%と1.1尾、スモルトが29.2%と0.4尾、1996年ではパーが60.0%と1.1尾、スモルトが50.0%と1.0尾であった。サケ稚魚を補食していたサクラマス幼魚の尾叉長範囲は11.8-17.1cmであった。1995年では大型のパーほど1個体当たりが補食したサケ稚魚の個体数が多い傾向が認められた。また、1996年ではパー、スモルトともにサクラマス幼魚の尾叉長が大きいほど補食したサケ稚魚のサイズが大きい傾向が認められた。降海時期ではパーは放流地点付近に滞留する傾向が強いことから、サクラマス幼魚とサケ稚魚を同時に増殖している河川では、サクラマス幼魚の補食によるサケ稚魚の減耗を抑制するために、サクラマス幼魚の0(+)秋放流や1(+)スモルト放流の放流地点はサケ稚魚より上流に設定すべきと考えられた。
著者
藤田 大介 瀬戸 陽一
出版者
富山県水産試験場
巻号頁・発行日
no.12, pp.13-18, 2000 (Released:2011-03-05)
著者
前田 経雄 土井 捷三郎
出版者
富山県水産試験場
雑誌
富山県水産試験場研究報告 (ISSN:09156542)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-9, 2006
被引用文献数
2

1988年7月、1989年5・6月、および2001年3・10月に富山湾をはじめとする日本海から採集された標本を用い、オオエッチュウバイBuccinum enuissimumの成熟サイズを推定した。本種の貝殻は薄く割れ易いため、殻長が計測できなかった個体については、蓋長径(OD)と殻長(SL)の回帰式(SL=63.859×Log(OD)-111.15、r2=0.94、p<0.001、n=281)により蓋長径から殻長を推定した。成熟度の指標には、生殖腺係数(生殖腺重量/蓋長径(3)×10(4))を用い、雄ではペニス長も併せて使用した。雌雄とも殻長90mm未満では生殖腺係数はほぼ0であったが、雄は殻長100-130mmにおいて、雌は殻長100-140mmにおいて、殻長の大きい個体ほど生殖腺係数の増加する傾向が認められた。ペニスは殻長100mmを境にして急速に大きくなり、殻長120mmでは長さが約60-110mmであった。以上のことから、オオエッチュウバイの雄は殻長100-130mmで、雌は100-140mmで成熟すると推定された。