著者
辻 圭秋 ツジ ヨシアキ Tsuji Yoshiaki
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-26, 2010-02-28

本論文は、「イスラーイーリーヤート」という概念に対する理解を、(1)現代イスラーム世界のウラマー、(2)I.Goldziher、(3)S.D.Goitein、の三者から探り、Goiteinのイスラーイーリーヤート理解が前二者とは大きく異なることを明らかにする。(1)現代イスラーム世界のウラマーによるイスラーイーリーヤート理解は、「ユダヤ教・キリスト教的な信頼できない言説の総体」であり、実際にユダヤ教に由来するかどうかは問わない。(2)Goldziherも、個々の言説のユダヤ教的来歴を問題として俎上に載せることはあっても、大部分はウラマーの規定に従っている。他方、(3)Goiteinはイスラーイーリーヤートを、「ユダヤ教に由来する言説」と理解する。Goiteinによるイスラーイーリーヤート研究の方法論は、ユダヤ学における教父研究に近いものであり、一神教研究のみならず、イスラーム・ユダヤ教交渉史を考える上で極めて有益な知見をもたらすものであることを明らかにする。

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