著者
井村 文音 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.217-234, 2012

家族成員との交流の中で,自身の同一性の発達よりも家族全体の安定性を優先し,表面的に強く調和する関係性を偽相互性という。現代青年には,友人との間で自己開示を求めながらも,円滑な人間関係の維持に重点を置き,発言を抑制する傾向がある。この傾向は,偽相互性に見られる相手を優先するために自己を抑制し,不十分にしか自身の思いを表現できないノン・アサーティブな自己表現の特徴と類似する。本研究は,家族機能状態に着目して偽相互性の特徴を想定し,家族成員間の相互作用の状態と青年の発言抑制傾向との関連性を検討することを目的とした。研究1 では,家族の偽相互性を想定した家族機能状態と青年の発言抑制傾向との関連性は明らかにされなかったが,家族機能の凝集性,及び適応性のそれぞれの側面と発言抑制傾向との関連性が示唆された。研究2 では,シンボル配置技法の1 つである家族イメージ法を用いた調査を行い,青年がイメージする家族機能状態や家族成員間の相互作用の状態と青年の発言抑制傾向との関連性を明らかにした。

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