著者
大黒屋 勉 大黒屋 有美
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.37, pp.13-17, 2010-12

3歳,去勢オスのロシアンブルー猫が,前日からの元気消失を主訴に来院した。稟告では,前日に1回のみ,黄緑色の液体を嘔吐したとのことであった。症例は,5%以上の脱水を呈していた。血液検査の結果,重度の高窒素血症が認められた。急性腎不全として輸液療法を開始したが,12時間以内に尿の生成は認められなかった。このため,ドパミンとフロセミドによる利尿を開始したが,12時間が経過しても効果は認められなかった。マンニトールによる利尿を追加したが,尿の生成は認められなかった。この時点で,飼主より症例が数日前にユリの花と葉を食べていたという稟告が得られ,ユリ中毒と判明した。同日,腹膜透析を行ったが,翌朝に死の転帰をとった。左右腎臓の病理組織検査においては,急性の尿細管壊死が認められた。これは,過去のユリ中毒の症例で認められた病理組織検査所見と一致するものであった。

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