著者
牧田 登之 加国 雅和 新宅 隆雄
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.25, pp.41-51, 1998-12

パナマ東部から南米のアンデス山脈東部のアルゼンチン東部から南はパラナ川へ広がる地域の河川,湖,沼の茂みや,人家に近い牧場の周辺部などにも多数生棲している特徴的に大きいラットのようなカピバラ(Capybara, Hydrochaeris hydrocheris)は最大の齧歯類として知られて居り3)5)9),野生動物ではあるが,年間に2~8子を産み,肉はおいしいので食用に供され多数飼育されている.ブラジルサンパウロ州マリリア市のマリリア大学獣医学部の協力によって,マリリア市郊外の飼育場よりメス1頭,オス2頭を購入し,解剖実習場で解剖を行い,内臓について記録をとることが出来た.我国の動物園にも居り,珍獣とは言えないが,その一部を報告する.
著者
佐藤 宏 松尾 加代子
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-11, 2016 (Released:2017-07-28)

近年,野生鳥獣肉がジビエとして広く流通し利活用が進められてきている。地方自治体ならびに厚生労働省の下で衛生管理のあり方が議論され,ガイドラインやマニュアルが作成されて安心・安全な食としての流通態勢が整いつつある。野生鳥獣は自然からの恵みであるが故に感染症に関わる実態がよく分かっておらず,突発的な食中毒問題が消費段階で起こり得ることが懸念される。ここでは寄生虫症に焦点を当てて,いくつかの起こり得る問題を概説してみたい。取り上げる話題はトキソプラズマ症,住肉胞子虫症,顎口虫症,トキソカラ症,旋毛虫症,肺吸虫症,肝蛭症,槍形吸虫症,マンソン孤虫症,疥癬である。これら寄生虫症予防は家畜肉の消費と基本的に同様で,野生鳥獣肉の保存と取り扱いに注意を払い,加熱食品の喫食を心懸けることに尽きる。
著者
大黒屋 勉 大黒屋 有美
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.37, pp.13-17, 2010-12

3歳,去勢オスのロシアンブルー猫が,前日からの元気消失を主訴に来院した。稟告では,前日に1回のみ,黄緑色の液体を嘔吐したとのことであった。症例は,5%以上の脱水を呈していた。血液検査の結果,重度の高窒素血症が認められた。急性腎不全として輸液療法を開始したが,12時間以内に尿の生成は認められなかった。このため,ドパミンとフロセミドによる利尿を開始したが,12時間が経過しても効果は認められなかった。マンニトールによる利尿を追加したが,尿の生成は認められなかった。この時点で,飼主より症例が数日前にユリの花と葉を食べていたという稟告が得られ,ユリ中毒と判明した。同日,腹膜透析を行ったが,翌朝に死の転帰をとった。左右腎臓の病理組織検査においては,急性の尿細管壊死が認められた。これは,過去のユリ中毒の症例で認められた病理組織検査所見と一致するものであった。
著者
笠井 亨浩 引田 久美子
出版者
山口県獣医師会
雑誌
山口獣医学雑誌 = The Yamaguchi journal of veterinary medicine : the official journal of the Yamaguchi Veterinary Medicinal Association (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.46, pp.39-42, 2019-12

牛の創傷治療において砂糖を使用し,良好な結果が得られた。治療牛は雌のホルスタイン種で,入牧時(18日齢)に腰部にカラスの咬傷とみられる15cm×10cmの化膿創を確認した。洗浄後,砂糖を創面に充填し,紙おむつで保護して伸縮性包帯で固定する方法で3~4日毎に治療を実施した。その結果,6日目には創面が縮小し,以降ワセリンの塗布に切り替えた。平成27年に抗菌薬を用いて臀部の化膿創を治療した例と比較しても,治療初期における肉芽組織の立ち上がりが早く,創傷の治療に砂糖が有効であることが示唆された。本症例の他にも化膿した除角痕に同様の治療を実施して良好な結果を得た。今後,固定方法や砂糖の使用が好適な傷の状態の見極めなどの検討を要するが,生産現場において,抗菌薬に代わり安価かつ簡便な創傷治療法として,砂糖が有効であることが示唆された。以上の成績から豚増殖性腸炎と診断した。本農場では,農場の衛生状態の悪化や子豚の免疫機能の低下が発症要因となったと考察された。
著者
鈴木 絢子 秋山 今日子 西尾 陽平 田丸 精治 亀尾 由紀 中野 仁志 野口 慧多 寺田 豊 下田 宙 鈴木 和男 渡部 孝 吉澤 未来 後藤 慈 佐藤 梓 池辺 祐介 佐藤 宏 前田 健
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-12, 2012 (Released:2014-01-30)

イヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus;CDV)は食肉目動物に致死的な感染を引き起こす。イヌでの致死的な感染はワクチン接種により減少しているが,野生動物での流行は拡大している傾向さえ見受けられる。更には,中国ではヒトと同じ霊長類であるサルに流行し,多くのサルが犠牲となったばかりか,国内の検疫所でも見つかっている。本項では最近国内の野生動物で発生した事例を中心に紹介する。
著者
鈴木 絢子 秋山 今日子 西尾 陽平 田丸 精治 亀尾 由紀 中野 仁志 野口 慧多 寺田 豊 下田 宙 鈴木 和男 渡部 孝 吉澤 未来 後藤 慈 佐藤 梓 池辺 祐介 佐藤 宏 前田 健
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-12, 2012-12

イヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus;CDV)は食肉目動物に致死的な感染を引き起こす。イヌでの致死的な感染はワクチン接種により減少しているが,野生動物での流行は拡大している傾向さえ見受けられる。更には,中国ではヒトと同じ霊長類であるサルに流行し,多くのサルが犠牲となったばかりか,国内の検疫所でも見つかっている。本項では最近国内の野生動物で発生した事例を中心に紹介する。
著者
亀山 光博
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.35, pp.21-25, 2008 (Released:2011-03-05)
著者
大黒屋 勉 大黒屋 有美
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.37, pp.13-17, 2010-12

3歳,去勢オスのロシアンブルー猫が,前日からの元気消失を主訴に来院した。稟告では,前日に1回のみ,黄緑色の液体を嘔吐したとのことであった。症例は,5%以上の脱水を呈していた。血液検査の結果,重度の高窒素血症が認められた。急性腎不全として輸液療法を開始したが,12時間以内に尿の生成は認められなかった。このため,ドパミンとフロセミドによる利尿を開始したが,12時間が経過しても効果は認められなかった。マンニトールによる利尿を追加したが,尿の生成は認められなかった。この時点で,飼主より症例が数日前にユリの花と葉を食べていたという稟告が得られ,ユリ中毒と判明した。同日,腹膜透析を行ったが,翌朝に死の転帰をとった。左右腎臓の病理組織検査においては,急性の尿細管壊死が認められた。これは,過去のユリ中毒の症例で認められた病理組織検査所見と一致するものであった。
著者
中尾 敏彦
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.32, pp.13-20, 2005-12

近年、乳牛の受胎率が世界的に低下してきており、その原因の解明と対策が求められている。わが国もその例外ではなく、受胎率の低下に伴って、分娩間隔の延長が認められている。このような、乳牛の受胎率低下の主な原因として、(1)乳牛の泌乳能力向上に伴って牛そのものが受胎しづらくなってきている可能性があること、(2)牛群規模の拡大に伴って飼育者自らが人工授精を行うことが多くなり、その結果として、人工授精技術上の問題が生じている可能性があること、(3)雄牛の生殖機能の低下などとの関連で人工授精に用いる凍結精液の精子の受精能が低下している可能性があること、などがあげられる。まず、授精技術上の問題が原因であるとすれば、受胎率の低下は、経産牛だけでなく、未経産牛にも見られるはずである。しかしながら、カナダのケベックでの大規模な調査成績では、未経産牛の初回および2回目受胎率は、1993年に比べて、2002年で低下しておらず、むしろ、やや高くなっていることが分かる。本稿では、特に経産牛でみられる受胎率低下の原因を、近年の経産牛で認められる生殖機能の変化との関係で解説するとともに、その対策にも言及してみたい。
著者
横溝 祐一
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-26, 1999-12
被引用文献数
3

ヨーネ病(パラ結核)はヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)の経口感染によっておこる反芻獣の慢性肉芽腫性腸炎である.本病は肉・乳牛に対し,早期廃用や乳生産性低下,体重増加率の減少により大きな経済的損害を与える.本病は1971年に家畜法定伝染病に指定され,1981年以降次第に増加傾向にある.1997年に,農林水産省はELISA,糞便培養,ヨーニンテストを患畜摘発診断法とする全国規模のヨーネ病撲滅事業を開始し,1997年1月~1999年10月までの期間に,2,060頭が患畜として補償殺処分となった.ブルセラ病や結核病がほぼ清浄化された現在,ヨーネ病はわが国の養牛産業にとって最も経済的被害の大きい細菌性家畜法定伝染病とみなされている.糞便を介して経口感染するヨーネ病の汚染レベルは農場での乳・肉牛の衛生管理度を反映する格好の指標ともなるので,本病の徹底した清浄化プログラムを推進する必要がある.本稿ではヨーネ菌の分子生物学的研究ならびにヨーネ病の免疫学的研究成果とそれらの診断法開発への応用研究展開について紹介する.さらに,予防・経済疫学的観点にもとづくヨーネ病清浄化戦略の構築の必要性を強調する.そして最後に家畜伝染病予防法適用下でのヨーネ病清浄化の進め方と留意点を総括する.
著者
佐藤 宏
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-26, 2011-12

粘液胞子虫類(Myxozoa門)は淡水,汽水,海水棲魚類の多細胞性寄生虫として知られ,基礎生物学分野や水産学分野では昔から注目され,重要視される生物群の1つである。一方,獣医学・医学領域ではほとんど知る人のない生物群であったことは間違いない。2011年4月下旬に,厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒・乳肉合同部会において,ヒラメ寄生の粘液胞子虫(Kudoa septempunctata)と馬肉寄生の住肉胞子虫(Sarcocystis fayeri)が,最近の「生食用生鮮食品を共通食とする病因物質不明有症事例」の原因となっている可能性が高いと報告され,その因果関係究明に,食品の安全性確保にあたる獣医師や医療関係者,感染症学や公衆衛生学の専門家の努力が注がれている。粘液胞子虫類には,2綱(軟胞子虫綱および粘液胞子虫綱)約60属2,200余種が分類され,市場流通している魚類に感染している種も少なくはない。その形態学的特徴の確認や種名特定には,この生物分類群に固有の用語の理解と基礎知識が必要となってくる。生物学的にも独特で,最近になってその生物学的な知見が爆発的に増えるとともに,研究が急展開している生物群である。成書やインターネット情報は今日の科学的進展に追いついていないことが懸念される。
著者
牧田 登之 藤澤 正彦 山根 哲也
出版者
山口県獣医学会
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.28, pp.11-19, 2001-12

ラクダ(Camellus)にはひとこぶラクダ(C. dromedarius)とふたこぶラクダ(C. bactrianus)がいる.1),7),8),14)ラクダの解剖学的な研究は総体として他の家畜に較べて少ない.研究者や研究発表の場は勿論あるのだが,論文の形式が従来の研究報告のそれと異なっていることや,英文で書かれていないことや,文献検索のシステムにインプットされていないこともあるようで意外に文献をさがすことが難しい.それでもひとこぶラクダについては成書15)が一点あり十数篇の論文5,6,12)があるが,ふたこぶラクダについては断片的な報告があるのみである.2,3,4,9,10,13,16,17)しかしラクダが使役用,運搬用,競技用,食用,皮革など生活資材用として重要な家畜であることは周知のことであり,また炎熱の砂漠を乏しい飲料水で何日も旅をすることが出来る生理的適応力があることが,研究者にとって興味がつきないので,国際家畜解剖学会(WAVA)の国際委員会でもラクダの解剖用語の選定を検討しはじめている.先に山口大学農学部獣医学科はエジプトの留学生数名の引受けや,研究者の交流を通じて,ヒトコブラクダの解剖学的,組織学的,組織化学的研究をすすめていた5),6)が,フタコブラクダの解剖の機会は得られなかった.昨年(2000)東京大学大学院農学生命研究科と,中国内蒙古大学校が学術交流協定を結んだことを縁として,フフホト(Fuhuhoto)市にある大学構内の解剖場で解剖を行い,またシリンゴ草原地帯のラクダの群を観ることができた.本報告はその解剖学的記録のうち,とくにラクダに特有なコブについてまとめたものである.