- 著者
-
細山 隆夫
- 出版者
- 北海道農業研究センター
- 雑誌
- 北海道農業研究センター研究報告 (ISSN:13478117)
- 巻号頁・発行日
- no.193, pp.11-39, 2011-01
本報告における検討結果は次のように整理される。第1に,1980年代後半以降の北海道では農家継承の不安定性が増している。高齢農家が増加するとともに,その離農も激しく進んできているのである。同時に,土地持ち非農家の増加は顕著だが,高齢者世帯であることから,家の永続は厳しい状態にある。第2に,農地賃貸借が急増してきている。土地持ち非農家増加により,以前からの売買とともに賃貸借が展開しているのである。ただし,土地持ち非農家といっても,高齢者世帯が中心であり,農地貸付の長期は保証されない。第3に農村集落は資源管理の主体と規定できない。そこでは資源管理の主体は集落ではなく,別組織が主に機能する状況にある。同時に,個々の参加者としては農地所有者であるにも拘わらず,土地持ち非農家の関与は少なく,農家群が支配的となっている。第4に,将来動向予測では水田中核地帯における危機的事態の発生が見込まれる。農地の需給構造は水田中核>畑作・酪農中核の順に緩和しており,水田中核では大幅な規模拡大が求められる。ただし,労働力は不足傾向にあり,農地余剰化も危惧されるのである。今後は以下の点が課題として指摘される。第1に,土地持ち非農家の集落居住は一代限りで終了するかどうか,具体的な検討が要請される。第2に借地展開の方向性であり,借地関係の継続・安定性の見通しが求められる。第3に,借地展開局面における集落の資源管理に関する実態解明である。第4に,水田地帯では協業経営法人化の体制構築も検討が求められる。