- 著者
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栗原 由紀子
- 雑誌
- 中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
- 巻号頁・発行日
- no.43, pp.541-567, 2012-09-28
調査データからのエビデンス獲得において、重要な変数の欠落により分析が困難な場合の1つの対処法として統計的マッチングがある。しかしながら、統計的マッチングでは異なる複数のデータセットから1つの融合データセットが作成されるため、そこから得られる推定量の精度やその有用性が問題となる。本研究は、ノンパラメトリック・マッチングにより得られる推定量(相関係数)について、実用的で精度の高い推定値を得るためのマッチング・プロセスを明らかにする。そのために、条件付き独立性の成立または条件付き従属性の程度、推定に利用する変数とキー変数との相関関係、重複率などをコントロールしたモンテカルロ・シミュレーションを実行した。その結果、重複標本でない場合には目標変数との相関が高いキー変数の選択が不可欠であり、また重複標本の場合には、条件付き従属性の強弱の計測が可能であり、実用的な精度での推定量が得られることを明らかにした。