- 著者
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小島 健
- 出版者
- 立正大学経済学会
- 雑誌
- 経済学季報 (ISSN:02883457)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.3, pp.37-52, 2008-03
欧州統合の歴史は中世にまで遡って考えることもできるが,現在のEUの原型が形成されたのは第二次大戦後の復興の後半局面にあたる1950年代前半のことである.1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の設立がそれである.本稿の目的は,ECSC設立前の欧州統合運動を考察することにある.欧州諸国政府が統合に向かって動くには,1945年の終戦後の民間における統合運動が大きく影響していた.しかし,従来の統合史研究は政府間ないし各国経済間の関係の分析に焦点が当てられ,非政府組織による欧州協調の動向に関心を払ってこなかった.こうした研究上の空白から,なぜ1950年代に入って大陸ヨーロッパ諸国政府が経済統合に向けて急速に舵を切ったのか,その背景にどのような人物や団体が影響を与えていたのかが明らかではなかった.本稿で考察する欧州経済協力連盟は,ヨーロッパの自由主義的政治家,経営者を中心として1940年代後半に結成され,経済統合についての研究,政策提言を行い,欧州統合を経済面から進める潮流を形成した.本稿では同連盟の設立期における活動を検証し,欧州統合が経済面で進展した背景の一端を明らかにする.