著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.65, pp.149-158, 2014-03-31

本研究では、子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのかについて、大学生を対象とした。回想的な質問紙調査により得られた事例をもとに考察を行った。その結果、以下のことが示唆された。子どもは幼児期の間にプレゼントにまつわる神秘的体験をもとに超自然的な力を持つ行為者としてのサンタクロースの概念を明確にしていく。幼児期の終わりから児童期中頃になると、子どもは論理的思考力や懐疑主義を身に着けるようになり、サンタクロース神話をめぐる数々の矛盾点に疑いの目を向け、それらを見破るようになる。具体的には、プレゼントの隠し場所や包み紙に関する見破り、プレゼントを置く瞬間の目撃、サンタクロースへの手紙の発見、手紙やプレゼントの内容に対する疑惑などが挙げられる。また、親や年長のきょうだい、友達からの証言もサンタクロースに対する不信に拍車をかける。そのようにしてサンタクロースを信じなくなる一方で、サンタクロースを信じようとする心も併せ持っており、子どもの心は両者の間を揺れ動いている。従って、親をはじめとする大人がそうした子どもの揺れ動く心にていねいに寄り添い、誠実に対応することがこの時期大切なこととして考えられる。さらに、「サンタクロースは本当はいない」という真実を知った時、子どもは怒りや悲しみ、憤りなど様々な感情的反応を示すが、大切なのはその時その瞬間ではなく、その後それをどのように意味づけ、振り返るかではないかと考察された。

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