著者
佐藤 宏
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-26, 2011-12

粘液胞子虫類(Myxozoa門)は淡水,汽水,海水棲魚類の多細胞性寄生虫として知られ,基礎生物学分野や水産学分野では昔から注目され,重要視される生物群の1つである。一方,獣医学・医学領域ではほとんど知る人のない生物群であったことは間違いない。2011年4月下旬に,厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒・乳肉合同部会において,ヒラメ寄生の粘液胞子虫(Kudoa septempunctata)と馬肉寄生の住肉胞子虫(Sarcocystis fayeri)が,最近の「生食用生鮮食品を共通食とする病因物質不明有症事例」の原因となっている可能性が高いと報告され,その因果関係究明に,食品の安全性確保にあたる獣医師や医療関係者,感染症学や公衆衛生学の専門家の努力が注がれている。粘液胞子虫類には,2綱(軟胞子虫綱および粘液胞子虫綱)約60属2,200余種が分類され,市場流通している魚類に感染している種も少なくはない。その形態学的特徴の確認や種名特定には,この生物分類群に固有の用語の理解と基礎知識が必要となってくる。生物学的にも独特で,最近になってその生物学的な知見が爆発的に増えるとともに,研究が急展開している生物群である。成書やインターネット情報は今日の科学的進展に追いついていないことが懸念される。

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こんな論文どうですか? 食中毒の新たな寄生虫性病原体として注目される粘液胞子虫の生物学(佐藤 宏),2011 https://t.co/jyI1wfBQLj

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