著者
山根 精一 別所 健治
出版者
島根大学
雑誌
島根大学論集 自然科学 (ISSN:04886542)
巻号頁・発行日
no.4, pp.105-111, 1954-03

島根県下の地質分布は,中国山脈に沿う火成岩(火山岩−石英粗面岩,玄武岩,安山岩,火山岩。深造岩−花崗岩,石英斑岩,閃緑岩,フン(王へんに分)岩。)が東より西南に帯状の基盤を置いて,北に斜走海岸に延び,叉水成岩(古生層−秩父古生層。中生層−御坂層。近生層−第三紀層,第四紀層,石灰岩。)が主として海岸に沿うている。本県の土地面積は全国各県のそれに比べて狭くはないが,土地利用上から見ると,耕地は10%弱で全国平均17%に比べて下位,叉耕地の利用度は119%で全国平均133%に比べて少く,更に自然的条件が略同様である隣接島取県の141%より遥かに低位にある。降水量については,平地1,500mm以上(島根半島の北岸.石見の沿岸)山地2,000mm以上(那賀,邑智両郡の山地,三瓶火山群地域)である。土壌母岩,地勢及び多雨気候と相侯つて地力の消耗は相当の面積に昇り,山麓地域は急傾斜,沿岸地域は砂丘を含む荒廃地が散見される。自然可耕地も荒廃のまま放置される現状である。終戦後は耕地の放棄150戸,50町歩に及びその地域は丘陵地及び山地に多い。これが対策としては,地力の維持増進と土地利用の新なる構想による農業経営改善が急務である。これについては,機械化と畜力利用による労力の節約,灌漑排水,干拓及び高冷地利用の適地適作主義の採用等が拳げられるがその実施に先駆して,地力維持及ひ土地利用の対策植物として何を導入するかが間題である。即ち先づ砂防,土壌侵蝕と水分肥料分流亡を防ぐ障壁となる植物を栽植してその繁茂に応じて各種作物が栽培できるやうに措置することが先決であると思考する。 筆者等はこの対策植物として,発根,根張,土壌関係及び水湿関係等を勘案し丘陵地,傾斜地に於いても自生し得るやしやぶしを採択した。実験は本学出雲農場で実施した。 本報告は栽植,成長土壌えの影響及び家畜飼料としての価値等に関する事項であつて今後尚この研究を進めたい。

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