著者
堀田 剛吉
出版者
島根農科大学
雑誌
島根農科大学研究報告 (ISSN:05598311)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.(A-5)8-18, 1967-01-31

我国の養蚕業は,北海道など一部の道府県をのぞけばほぼ全国的に分布しているが,生産の密度・生産費など13;にあらわれた結果より推定すれば,地帯別にかなり異なった形式で生産されており,しかも生産性格差は拡大してきていることが解る.これは養蚕業が,変遷する地域の環境条件へ適合する形で発展してきた結果であるが,それが合理的なものであったかどうかには疑問がのこる.この問題の解明には養蚕業がいかなる地帯に発展するかという問題と,養蚕業が環境条件へ如何に適合し生産性を高めていくかという時限の異なった二つの問題究明が必要である.筆者はこの問題を検討するため第1段階として,養蚕業の立地条件の吟味と地帯別養蚕業の変遷を解明した.この研究は農林省各種統計の利用を中心としておこなったため,次のごとき二つの重大な障害が生じた.13; 第1は,現在養蚕業は農業経営の一部門としておこなわれており,農業経営内での養蚕の地位が問題となるが,この研究では他部門との関係は捨象し養蚕部門のみをとり出す結果となったことである.これは同じ規模、密度で養蚕をおこなっているものは同質と考えることを意味しており,農業経営中の地位より来る養蚕業の対応の仕方を無視することになる.しかしこれはできる限り他の経営条件,その地域の養蚕業の変遷をみることにより補足把握することにつとめた.13; 第2の問題は,統計資料は平均化されたものが多く,地帯を大分割して等質のものとみたことで,地域の特性をつかむことにはなるが,同時にその中での多岐にわたる条件が平準化され,養蚕業そのものの大事な特性をも隠蔽される.時には反対の結果をだす危険性も生ずる.従ってこの問題は過去にだされた文献(とくに32年3月に農林省蚕糸局よりだされた養蚕経営分析)により補い,ここでは統計より言いうる鮮明な問題のみを解明した.従って第2段階として小地域の調査分析により,これらの問題は後日補っていきたい.

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