著者
濱田 弘潤 Hamada Kojun
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.98, pp.1-42, 2015-03

本論文は,混合寡占市場の下で公企業と私企業がそれぞれ,生産量を決定する時期を内生的に選択する状況を考察し,各企業の生産量決定の時期に関するサブゲーム完全均衡について再検討を行う.Pal(1998)により,混合寡占市場の下での生産量決定のタイミングが初めて内生的に分析された.それ以来多くの既存研究が,公企業と私企業の手番の内生化について研究を行っている.しかしPal(1998)が導出した均衡結果に対して,その後Jacques(2004)とLu(2007)により,内生的タイミングの均衡に記載漏れが存在することが示されている.均衡の記載漏れが生じた理由は,内生的タイミングに関して起こり得る全てのケースを,網羅的・包括的に検討しなかったためである.本論文では,内生的タイミングで起こり得る全てのパターンを網羅的・包括的に分類した上で,各ケースで公企業と私企業がそれぞれ逸脱するか否かを分析し,全てのサブゲーム完全均衡を導出することを試みる.結論として以下の点が示される.第一に,私企業数が1社の場合の起こり得る全ての状況を記述し,私企業リーダーのシュタッケルベルク競争と,公企業が第1期,私企業が最終期を選択するシュタッケルベルク競争の2つが,サブゲーム完全均衡になることを確認する.第二に,私企業数が2社の場合の起こり得る全ての状況を記述し,全私企業が先手同時手番,公企業が後手番となる逐次手番競争のみがサブゲーム完全均衡になることを確認する.第三に,私企業数が一般的なN社のケースで全私企業が同じタイミングを選択する対称均衡を考察し,起こり得る企業の逸脱を全て検討することにより,全私企業が先手同時手番,公企業が後手番となる逐次手番競争のみが,対称均衡における唯一のサブゲーム完全均衡となることを確認する.

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