著者
齋藤 達弘
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 = 新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.129-229, 2016-03

この論文の目的は,キノコの生産販売大手,雪国まいたけの創業経営者,大平喜信の突然の辞任から,雪国まいたけが米系投資ファンドにTOB(株式公開買い付け)され,上場廃止に至るまでの一連の出来事をコーポレート・ファイナンスの視点から考察することにある.この論文では,視点を創業経営者が経営する同族企業のコーポレート・ガバナンスに広げて,雪国まいたけとはどのような会社だったのか,大平喜信はどのような経営者だったのかについても考察する.経営者の迅速な意思決定は拙速と紙一重で,迅速は成長を導く一方で,拙速は暴走を招く.この論文は,オーナーが支配する中堅企業について,創業経営者のワンマン経営や血族主義の弊害の典型的な事例を提示する.
著者
北條 雅一 Hojo Masakazu
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.99, pp.1-15, 2015-09

本稿は,算数・数学の学力や学習態度の男女差について,日米比較の観点から分析を試みるものである。分析には2種類の国際学力調査を用い,小学校・中学校・高等学校のすべてを分析対象とする。分析の結果,日米ともに数学の学力や学習態度に男女差が確認され,特に学習態度については日米間で顕著な違いがみられた。日米ともに第4学年では女子のほうが否定的な回答をする傾向が確認されたが,その傾向は米国の第8学年では縮小し,日本の第8学年では拡大していた。数学の有用性に関する設問に対して,米国の生徒は肯定的な回答をする傾向が明らかに強く,同時にこれらの設問に対する回答の男女差が日本の生徒に比べて小さいことが確認された。
著者
澤村 明 Sawamura Akira
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.99, pp.91-99, 2015-09

In Japan, most dog houses have trianglar roof, e.g. gable-roofs and entrance in the gable end. This phenomenon has no necessity, it needs only box-type, or shed-roof against the rain. But there are no thesis to research the reason why. The first 'dog house' in the history of Japan was appeared in 1696, when Shogun Tsunayoshi ordered to build the dog houses as the shelter for dogs, as a part of policies of the Shorui-Awaremi-no-rei (ordinances of animal protection). But its shape and size was 18m long and 3.6m wide, and there were 290 houses for dogs and sheds for feeding. This was not the prototype of contemporary dog house argued in this thesis. In Edo period(eraly modern era in Japan), Japanese people keep Chin (Japanese spaniels)within doors, and others were stray dogs. So, there were no dog houses in Japan before the modern generation begun in 1867 as Meiji period. Japan ended its national isolation at the end of the Edo period, then many western styles were carried in Japan. One of them is the western way to keep dogs was also delivered to Japan. The Painters drew many pictures of Western things becaouse they were very fresh and novel for Japanese. Although some historians have been reported that the dog houses were portrayed in some of those pictures, they hae never referred that shape. Fig. 1 is the first picture of the dog house in Japan. This was in the Dutch residence in Yokohama, and pictured in 1862. Fig .2 is the discription of dog house in other storehouse owned by Japanese in Yokohama, we can see the pentagon-like dog house in the text of wood-blocked printing. Fig. 3 is in the other pages of same book as fig. 2. The conclusion of this thesis is slightly as a hypothesis, but the dog house with gable-roof and entrance in the gable end was carried in Meiji period from western world. Then, in western world, how the dog house was made up with this shape? It would be a farther subject, but I found a few historicalpaterials in United States, fig. 4 is the political caricature in around 1864 in the Library of Congress, and fig. 5 is the dog house for Dash, the pet of President Harrison. The dog house in Japan deems to have a common ancester with that in the famous comic of Snoopy.
著者
伊藤 隆康
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 = 新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.83, pp.83-90, 2007-09

OISは日銀が量的緩和政策を解除した06年3月頃から徐々に取引が増え始め,06年7月のゼロ金利解除以降,取引残高と件数がともに拡大傾向となった。07年に入ってからは,日銀の追加利上げ観測を背景にOIS市場は活況を呈した。07年5月現在でOIS取引に参加しているのは,欧州系を中心とした外資系の金融機関が大半であるが,一部の邦銀や証券会社の参加も若干観測されている。TIBORやユーロ円の金融先物取引を用いても,市場が日銀の政策変更をどの程度予想しているかを分析することは可能である。しかし,OISの決定会合間取引は次回の決定会合までの翌日物金利の予想をベースに取引するため,他の金融商品と比較した場合,市場が予想している金融政策変更に関する情報を得るにはより適していると考えられる。
著者
佐藤 芳行
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.90, pp.115-150, 2011-03

ロシアでは1992年の「改革」の実施とともに所得分配をめぐる紛争からハイパー・インフレーションが生じ,それと関連しながら様々な調整が進行した。マネタリズムの政策志向は,通貨不足をもたらしつつ,賃金と利潤,エネルギー資源部門とその他の部門との間の所得分配に大きな影響を与えた。1998年の通貨危機後の政策転換は,資源価格の高騰とともに大きな変化をもたらしたが,「オランダ病」の症候が依然としてロシアに特徴的でありつづけている。
著者
芹澤 伸子
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.88, pp.1-17, 2010-03

企業統治のあり方が公的企業の経営にどのように影響を与えるのか,不確実性を仮定して考察した。政府がエージェント契約を締結して民間人や身内である公務員に業務委託するとき,市場に不確実性があればエージェントの行動は彼のリスクに対する許容度に依存する。そこで本論では,政府の目的関数がエージェントのタイプ毎に異なると仮定し,異なるレジームの均衡を比較考察した。その結果,エージェントのリスク許容度によっては公務員への成果主義導入で民間への業務委託より高い厚生水準を達成できる可能性があることを示す。
著者
齋藤 達弘
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 = 新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.211-216, 2012-03

この論文の目的は,1993 年から2009 年までの16 年間の業種インデクスの月次投資収益率を使って,「ディフェンシブ」(食料品,医薬品,電気・ガス業,陸運業)は本当にディフェンシブなのかを検証することにある.そして,結論として,「ディフェンシブ」はいずれもロー・リスクで,なかでもポートフォリオの文脈で望ましい「ディフェンシブ」は電気・ガス業であることを示す.
著者
川出 真清 Kawade Masumi
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.87, pp.185-204, 2009-09

本論は2009年に決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」に基づき、財政再建の先送りとその影響について、世代間および世代内の格差に与える影響を評価する。具体的には、日本の人口動態や日本経済の技術進歩などを導入した世代重複型応用一般均衡モデルである川出(2007)に、世代内の生産性格差を導入し、公共支出がその生産性に影響を与えるよう拡張した。この拡張により従来の公共投資の生産性効果のみならず、短期的な就業機会の影響もあわせて考慮する。その結果、現在の財政再建先送りは①低生産現役世代のみに便益をもたらすこと、②財政再建の際に公共投資を用いることは減税に比べ、低生産現役世代の便益ではなく他の世代の負担を軽減するのに役立つ、などの結果を得た。
著者
藤堂 史明 Toudou Fumiaki
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.96, pp.49-65, 2014-03

2011年3月の東日本大震災と東電福島第一原発事故以降,複数の論考で主に原子力防災と放射線リスクの受容に関する分析を行ってきたが,エネルギー・環境政策の分野では,原子力発電とそこからの放射性物質の放出,リスクの管理という基本的問題から離れて,エネルギー供給の社会的な費用についての議論が盛んである。本論文は,原子力発電所の規制指針の改訂により停止中の日本国内の既存の原子力発電所について,これを再稼働させるべきかについての議論に焦点を合わせる。本論文では関連する論点についての主な主張を概観し,経済学的な論理を抽出し,その構造を明らかにする。これらの経済学的論理に付随してみられる埋没費用概念の誤用は,エネルギー政策についての議論において注意されるべきものである。Following preceding analyses on acceptance of radiation risk and nuclear disaster prevention after the Great East Japan Earthquake and the TEPCO Fukushima Daiichi nuclear power plant accident in March, 2011, this paper focuses on economical logics in the debates on restarting of the existent nuclear power plants in Japan, stopping due to the revise of nuclear power plants' regulations. By analyzing major assertions related, this paper clarifies the economical logics and its structures inside. These economical logics and accompanying misuse of the notion of sunk costs should be paid attentions in the debates on energy policies.
著者
濱田 弘潤 Hamada Kojun
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.98, pp.1-42, 2015-03

本論文は,混合寡占市場の下で公企業と私企業がそれぞれ,生産量を決定する時期を内生的に選択する状況を考察し,各企業の生産量決定の時期に関するサブゲーム完全均衡について再検討を行う.Pal(1998)により,混合寡占市場の下での生産量決定のタイミングが初めて内生的に分析された.それ以来多くの既存研究が,公企業と私企業の手番の内生化について研究を行っている.しかしPal(1998)が導出した均衡結果に対して,その後Jacques(2004)とLu(2007)により,内生的タイミングの均衡に記載漏れが存在することが示されている.均衡の記載漏れが生じた理由は,内生的タイミングに関して起こり得る全てのケースを,網羅的・包括的に検討しなかったためである.本論文では,内生的タイミングで起こり得る全てのパターンを網羅的・包括的に分類した上で,各ケースで公企業と私企業がそれぞれ逸脱するか否かを分析し,全てのサブゲーム完全均衡を導出することを試みる.結論として以下の点が示される.第一に,私企業数が1社の場合の起こり得る全ての状況を記述し,私企業リーダーのシュタッケルベルク競争と,公企業が第1期,私企業が最終期を選択するシュタッケルベルク競争の2つが,サブゲーム完全均衡になることを確認する.第二に,私企業数が2社の場合の起こり得る全ての状況を記述し,全私企業が先手同時手番,公企業が後手番となる逐次手番競争のみがサブゲーム完全均衡になることを確認する.第三に,私企業数が一般的なN社のケースで全私企業が同じタイミングを選択する対称均衡を考察し,起こり得る企業の逸脱を全て検討することにより,全私企業が先手同時手番,公企業が後手番となる逐次手番競争のみが,対称均衡における唯一のサブゲーム完全均衡となることを確認する.
著者
齋藤 達弘 Saito Tatsuhiro
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.96, pp.157-170, 2014-03

この論文の目的は,一正蒲鉾株式会杜が,店頭登録市場に株式を公開した 1989年から2013年までの25年間,どのように企業成長をファイナンスしてきたのかを検証し,その財務政策を考察することにある.一正蒲鉾は,株式を公開した後の資金調達を資本市場に求めることはなく,もっぱら銀行借入に頼り続けている.なぜ一正蒲鉾は株式発行による資金調達を選択しないのか.その理由は,経営権を脅かすことになりかねない株主構成の変化を回避し,ファミリー企業として存続させたいという企業の私物化にあるのではないかと考える.
著者
伊藤 隆康 Ito Takayasu
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.83, pp.83-90, 2007-09

OISは日銀が量的緩和政策を解除した06年3月頃から徐々に取引が増え始め,06年7月のゼロ金利解除以降,取引残高と件数がともに拡大傾向となった。07年に入ってからは,日銀の追加利上げ観測を背景にOIS市場は活況を呈した。07年5月現在でOIS取引に参加しているのは,欧州系を中心とした外資系の金融機関が大半であるが,一部の邦銀や証券会社の参加も若干観測されている。TIBORやユーロ円の金融先物取引を用いても,市場が日銀の政策変更をどの程度予想しているかを分析することは可能である。しかし,OISの決定会合間取引は次回の決定会合までの翌日物金利の予想をベースに取引するため,他の金融商品と比較した場合,市場が予想している金融政策変更に関する情報を得るにはより適していると考えられる。
著者
伊藤 隆康 Ito Takayasu
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.96, pp.149-156, 2014-03

本稿では日銀が2013年4月4日に導入を決定した量的・質的緩和が,金融市場に与えた短期的な効果を検証した。3カ月後,6カ月後において緩和効果が認められたのが,短期金利と株価,ドル円レートであった。一方,不動産投資信託(REIT)に対する効果は認められなかった。また,中長期ゾーンのイールドカーブ低下効果も認められず,中長期金利は上昇した。日銀は質的・量的緩和の導入に伴って,新発国債発行額の約7割に相当する国債の購入を決めた。しかし,国債市場の需給が引き締まることで,国債の価格は上昇(利回りは低下)するとの見通しは外れた。
著者
斎藤 達弘
出版者
新潟大学
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.57-68, 2007-03

イベント・スタディにおけるクラスタリング効果とは,同じ産業に所属するサンプルを用いて,イベントとウインドウを共通に設定するイベント・スタディで発生する問題である。この論文は,2003年11月29日に一時国有化された足利銀行の経営破綻が他の地方銀行に与えた影響を分析対象にして,イベント・スタディにおけるクラスタリング効果の影響を検証している。そして,クラスタリング効果の影響は大きく,その影響を考慮しないとき,アブノーマル・リターンに関する帰無仮説が棄却されるバイアスがあることを確認している。