- 著者
-
有賀 雅奈
- 出版者
- 北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
- 雑誌
- 科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.23-34, 2015-07
日本では,サイエンティフィック・イラストレーション(以下,SI)やメディカル・イラストレーション(以下,MI)を描くイラストレーターが注目されることは少なく,彼らの活動はよくわかっていない.本稿では,SIやMIを描くイラストレーターの団体活動に注目し,団体活動の動向を明らかにすることを目的とした.方法はインタビュー調査である.SIやMIを活動テーマに含み,プロのイラストレーターが関わっている11の団体を選定し,代表や事務局などにインタビュー調査を実施した.その結果,日本にはSIをテーマとする小規模の団体のほか,植物などの重複する,あるいは下位のテーマで活動する団体,SIやMIよりも広いテーマで活動する団体がみられた.2010年以降,SIとMIのイラストレーター向けの教育を行う団体も現れていた.団体の活動内容は設立時期が90年代以前の団体は展示を,90年代頃に設立された団体は研究会を,2010 年以降の団体は教育を行うという傾向があった.また,日本のSIやMIのプロのイラストレーターは関心に合う団体に分散して所属する傾向があった.全体としてSIやMIのプロのイラストレーターの巨大な職業団体や教育組織を持つ欧米とは,特徴が大きく異なることが明らかになった.