著者
蔭山 峰子 カゲヤマ ミネコ Kageyama Mineko
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.10, pp.21-40, 2012-03

研究論文(Article)本稿では、口頭による情報伝達の「わかりやすさ」を決定する要因の一端を探ることを目的とし、音声による「情報伝達のプロ」の談話を分析し考察した。伝達のためのストラテジーとその言語的特徴に焦点を絞り分析した結果、一般の日本語話者から一定の評価を受けている情報伝達のプロの談話には、聞き手の理解を助けるというコミュニケーション上の目的のために、(1)予告性 (2)反復性 (3)共感性 (4)平易性 (5)冗長性 (6)省略性の6 つの特徴があることが示された。さらに、各項目において様々な言語的特徴が観察され、どの特性も連続性を持って互いに機能し合っていることが明らかになった。今回の分析から、聞き手が不特定多数で時間制限のある解説型パブリックスピーキングにおいて「わかりやすい」説明をするために、伝達のプロは、1. 伝達すべき内容は、その前にその都度何らかの形で聞き手に予告すること、2. 説明に重要であると思われる言葉や表現は、代名詞に置き換えず何度も反復すること、3. 常に聞き手の気持ちに寄り添い共有し、話し手との心的距離を感じさせないように努めること、4. 聞き手にとって難しいであろう漢語や専門用語を前もって予測し、それらについてかみくだいて説明すること、5. 聞き手が内容を理解するための適度な時間的・心理的余裕を与えること、6. 説明に重要ではない表現等の繰り返しは極力省略すること、を実践していることが示された。

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