著者
毛利 良一 Ryoichi Mohri
出版者
日本福祉大学経済学会
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The journal of economic studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.51, pp.33-60, 2015-09

本稿は,「広島・長崎への原爆投下から福島第一原発崩壊へ」をメインタイトルに,「日米核同盟,核燃料サイクル,原発の新増設・脱原発を中心に」をサブタイトルにする.狙いは,①原爆投下地広島・長崎の非戦闘員・一般住民が無差別かつ大量に殺傷(両市の死者は20万人超)されたこと,②福島第一原発崩壊による無辜の住民(およそ10数万人)が長期にわたる避難生活を余儀なくされていること,③1953年のマーシャル諸島近海のビキニ環礁で静岡県焼津のマグロ漁船「第五福竜丸」が被曝をし,世界に例を見ないマルチ被ばく国日本という国が,「日米原子力協定」という日米核同盟に繋がっていることの政治経済学的意味,④地球上では米・英・独など西側主要国が中止するに至った核燃料サイクル政策の分裂,すなわち他方でフランス,ロシア,さらには新興中国と並んで日本が追い求めている理由と展望,⑤福島第一事故後の世界でルネッサンスとも呼ばれる原発推進や新規導入,原発輸出に走る国々の思惑と,⑥脱原発を選択したドイツやスイスの政治的社会的決断の重みの比較,を私なりに整理してみたいと考えたからである.「マンハッタン計画」および広島・長崎への原爆投下から始めたのは,原発の歴史および根源を理解しておくためである.福島の被災地の住民の状況や日本国民の選択をむすびで書きたかったが不勉強ではたせなかった.原発推進国と対比してドイツ国民の脱原発で稿を閉じるのは,地球世界の連続と不連続を統一的に把えたいと考えたからである.「戦後70年」における私なりのひとつの総括としたい.This paper studies on the facts and meanings of the followings:(1)More than 200 thousand of non-military citizens at Hiroshima and Nagasaki were killed by atomic bombs. (2)Around 150 thousand citizens at Fukushima have been forced to evacuate for more than four years and more.(3)Japan has maintained tenacious Nuclear Alliance with U.S. in spite of Japan's radioactive contamination for four times, historically rare in the world, including nuclear exposure at the Marshall islands.(4)Japan has desperately pursuited nuclear fuel cycle in spite of resignation of other advanced countries such as U.S., UK, Germany, etc., but France, Russia and China have continued the efforts. (5)So-called Runaissance of nuclear power plants building and export boom are in bloom in many countries unwisely, on one hand. (6)We have heard hopeful decisions the people of Germany, Switzerland and others have selected wisely phase-out policy of nuclear power on the other hand.

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