著者
岸本 千佳司 Chikashi Kishimoto
雑誌
AGI Working Paper Series = AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.1-36, 2015-01

台湾は国際的に見てもベンチャーキャピタル(VC)業の活発な国とみなされている。実際,1990 年代後半,台湾の VC 業界は,成長期にあった半導体・IT 等ハイテク産業へ遊休資金を集中投下してそれを助け,そのことで VC 業界自身も急成長を遂げた。しかし,2000年代以降は,投資金額・案件数および VC ファンドの新設数も以前のような右肩上がりではなくなった。近年は,投資金額・案件数の激減,資金調達の困難さ,海外資金の流入の少なさ,初期ステージ企業への投資比率の低さといった諸問題が表面化している。こうした 1 国(あるいは 1 地域)の VC 業の発展を左右する要因,とりわけ政府の役割について探究することが本研究の課題である。分析の結果,台湾の VC 業の発展は,当初は政府主導であったが,政府介入は民間 VC 業の発展を促す間接的な方法が中心であったことが判明した。またVC 業の発展は,半導体・IT 等ハイテク産業振興策とセットになったもので,当然,投資対象となる産業の盛衰と密接にリンクしている。近年の VC 業停滞も,成長性の高い新産業が十分勃興していないこと,および最近人気の文化創意産業やインターネット関連ビジネス等は比較的小規模・短期的な投資で賄える業種で,従来型 VC よりも敏速で小回りの利くエンジェルやシードアクセラレーターが必要とされていることが背景にある。

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