著者
吉水 千鶴子
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会; 京都大学ブータン友好プログラム; 京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
no.17, pp.146-153, 2016-03-28

特集4: 雲南懇話会からの寄稿 = Special Issue 4: Contribution from the Yunnan Forumチベット民族には政治から人々の日常生活にいたるまで, すみずみまで仏教が浸透している。その歴史的背景を探ると7世紀の仏教伝来に遡るが, 国家仏教として取り入れられた事情は日本と相通じるものがある。その後も仏教は国の政治と密接に関わり, チベット民族の重要な外交手段となっていった。元朝, 明朝, 清朝という強力な中華王朝に対し, 彼らは仏教を広めることによって内陸アジア一帯にチベット仏教文化圏を形成し, 自らの生き残りを図った。その過程で生まれたのが転生活仏ダライ・ラマを頂点とする政教一致の政治体制である。一方, 仏教はチベット文化の核であり, チベット民族ばかりなくモンゴル, ネパール, ブータンの多くの人びとの精神的支えである。僧院ではさまざまな学問が行われ, インドから伝えられた仏教の教義が研究され, チベット独自の発展をとげた。現在も続くチベット仏教の主要な宗派は12世紀から15世紀の間に誕生している。 今のチベット系民族は, 中華人民共和国内の西蔵自治区, 四川省, 青海省, 雲南省, 甘粛省などの地域と, ネパール, ブータン, インドのラダック地方に居住するほか (地図1), チベットから亡命した人々とその子孫が世界各地に分散している。ダライ・ラマの亡命政府はインドのダラムサラにある。ばらばらになった彼らを繋いでいるのも仏教である。チベット民族のアイデンティティとも言える彼らの仏教の世界を, その始まりから17世紀のダライ・ラマ政権成立に至る礎の時代を通して紹介する。

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"物部氏は…。日本には古来の神々がいる。外来の仏を信仰すればこれら神々の怒りを買うであろう。反対派は、疫病の流行などは仏教導入のせいだと主張した。チベットでも同様のことが起こった" →興味深い

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