- 著者
-
岩崎 保道
- 出版者
- 関西大学教育開発支援センター
- 雑誌
- 関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
- 巻号頁・発行日
- no.4, pp.19-27, 2013-03
本稿は、IR(Institutional Research)の実施状況と特徴を明らかにするものである。その方法として、IRに関する先行研究を踏まえ国立大学における取り組み事例を分析する。国立大学の法人化(2004年度)以降、事業成果を客観的に評価したり次期政策のエビテンスとなる科学的な分析データが重視されるようになった。特に、法人評価の結果は「第三者評価の結果を大学の資源配分に確実に反映される」ことから、大学データを戦略的に活用することが国立大学の課題となっている。国立大学が法人化の趣旨を真に活かした事業展開するためには、科学的な根拠に基づいた政策判断が重要になる。そのためにも優れた情報分析の手法や取り組みを導入することが大学機能の向上に必要になると考える。前述の目的を達成するため、以下の展開により検討を行う。第一に、国立大学におけるIRの必要性に関する先行研究を紹介する。第二に、IRに関するアンケート調査結果を紹介することにより、IRの実施状況を概観する。具体的には、日本生産性本部(2012)及び高田ほか(2012)による調査結果を紹介する。第三に、国立大学におけるIRの取り組みとして、三大学の取り組みを紹介する。教学データを中心にするものや大学全体に関わるデータを対象にして情報分析するものなど、各大学の趣旨に応じた体制が構築されている。第四に、まとめとして国立大学におけるIRの特徴を整理する。筆者は、勤務校においてIRや大学評価に関わる業務を行っている。これまでの評価業務を通じて、大学データの管理や情報分析は大きな役割を担う実感を持った。特にIRは大学改革に資する情報を提供する職責を持つ業務と考え、高等教育の質的向上につながることを期待して当該研究を行うものである。