著者
石毛 弓 Yumi ISHIGE
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-14, 2015

さまざまな哲学者たちが人格の同一性に関する論を展開しているが、なかでもデレク・パーフィットは彼独特の一種ラディカルな見解を示している。それを端的に示せば、「人格の同一性は、私たちの生存にとってもっとも重要なものではない」になるだろう。この見解は彼自身が認めている通り、一般的な経験からすると受け入れることが難しいものである。本論は彼がこの見解に至った過程を考察するとともに、その妥当性を功利主義の観点から検討する。まずパーフィットにおける人格の同一性の概念を、彼の論に沿って「非還元主義」と「還元主義」に分けて解説する。非還元主義とは、人格はなにかによって説明され得るものではなく、それそのものとしか表しようがないとする考えを指す。他方、還元主義では、人格の同一性はなんらかの経験的なものによって説明され得るとみなされ、彼自身の考えは大きくくくればこちらに与する。人格の概念に対してパーフィット流の還元主義を選択した場合とそうでない場合では、私たちの思考や態度は変化するだろう。後半ではこの変化をとくに功利主義の観点から追い、人格に対する彼の主張を検証する。

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