- 著者
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山口 晴幸
- 出版者
- 水利科学研究所
- 雑誌
- 水利科学 (ISSN:00394858)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.83-121, 2008
自然科学紀行古水史跡編。沖縄水史観。宮古島の無尽蔵に地下水を秘めた洞井と水事情。先人達の水確保の始まり。約600 kmの弧状列島を形成している琉球列島のほぼ中央に位置する宮古諸島は、大小8つの島々から構成されている。宮古諸島はじめ大小150余の島々からなる琉球列島では、亜熱帯海洋性気候に位置する島嶼独特の水資源環境が形成されていることから、島の暮らしや生活様式の変遷などを語る際には、水問題や水事業などの歴史的背景やその経緯を通して、「水」との関わりを思考することが重要な要素の一つとなっている。水資源となる河川や湖沼のない宮古諸島では、水道施設が普及するまでは、古来より長い間、島民の生活用水や農業用水には、もっぱら天水(雨水)と洞窟からの湧き水が利用されてきた。今も雨水の利用は人家の庭や軒先で散見できる。以前は赤瓦屋根に樋を引き、琉球石灰岩の切石やコンクリート造りのタンクに集水していた雨水が、飲料水などの貴重な生活用水源であったが、最近ではコンクリート屋根に塩ビパイプを引きスチールやポリタンクに集水するようになった。また防潮風林として植えられた太いフクギや桑の木などの幹に藁を結びつけて雨水を集水していた。