著者
生方 智子
出版者
明治大学文学部文芸研究会
雑誌
文芸研究 : 明治大学文学部紀要 (ISSN:03895882)
巻号頁・発行日
no.128, pp.51-68, 2016

谷崎潤一郎は、大正期において、分身関係をテーマとした小説を多数発表した。また谷崎のみならず、芥川龍之介や佐藤春夫ら大正期の作家たちも分身小説を執筆している。大正期の文学作品の特徴について考察した川本三郎は、分身小説が生み出された背景に近代特有の時代状況があると論じる。近代とは、産業革命以降、目まぐるしい技術革新に伴って社会変化がもたらされた時代であり、近代に生きる者は、時間的・制度的な安定を失って「近代の特有の病い」としての「自己分裂という現象」に直面することになった。分身小説はこのような近代の体験としての「自己分裂という物語」を描いたと述べる。また、渡邉正彦は、近代という時代に生きる人聞の状況をテクノロジーの体験として問題化し、分身小説は、映画という技術によってもたらされたと論じる。

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【Webで読める論文】 生方 智子「アーク灯の光、そして影 -谷崎潤一郎『秘密』における分身のテクノロジー」2016 https://t.co/57YvfjlaJt
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