- 著者
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Jamet Olivier
- 出版者
- 天理大学学術研究委員会
- 雑誌
- 天理大学学報 (ISSN:03874311)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.2, pp.51-71, 2011-02
1911年8月桂太郎内閣が弾圧政治を行っていた時代に,夏目漱石は関西で4つの講演を行った。それは今日まで色あせることのない捕われた人間の個人としての自立と保護を訴える鋭いヒューマニズムを表明するものであった。本論文では大阪で行われた4番目の講演「文芸と道徳」について考察する。最初に当時の社会において漱石が個人の価値を認めるに至った経緯を説明し,急激に変化する社会を示す概念,表現,「鍵」となる漱石の言葉に焦点を当てる。そして夏目漱石文学におけるこの講演会の重要性,特に自己の存在への不安と危機が生じた約10年の間に起こった漱石自身の大きな変化を述べ,社会政治的性格を有したメッセージの重要性を説く。