著者
梶井 一暁
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.163, pp.9-19, 2016

本小稿は,19 世紀末から20 世紀初頭の日本における前近代的な手習塾(寺子屋)から近代的な国民教育への移行過程を考察するとともに,その教育の近代化がもたらす教育観の変化について論じるものである。近代において国民教育を行う機関であった学校は,教師が生徒に一斉教授を行う場であった。前近代の手習塾は,教師が生徒に個別教授を行う場であったことを考えると,大きな転換である。近代学校で教壇に立つ教師は,一斉教授を行う方法を心得る存在ゆえ,時代における新しい教師であった。 近代学校で一般化した一斉教授法は,教師による集団としての生徒の同時,同一の行為を強く求める方法であった。換言すれば,生徒の身体の制御と統制を必然とする方法であった。そして,この近代学校を通じて形成される制御と統制に馴染んだ生徒の身体は,人的資本の観点からすれば,労働市場の近代化と技能の標準化にとって有利な条件であった。

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