- 著者
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下野 恵子
- 出版者
- 中央大学経済研究所
- 雑誌
- 中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
- 巻号頁・発行日
- no.48, pp.41-68, 2016
この論文では,2008年に開始されたEPAによる外国人看護師・介護福祉士候補の受入れ政策を取りあげる。なぜ日本人の税金で,しかも日本語で,外国人の看護師・介護福祉士を育成しなくてはならないのであろうか。 この政策には2つの大きな問題点がある。第1は,政策目的が不明確なことである。政府は「将来的に外国人看護師・介護福祉士の受入れを目標とするものではない」と述べているが,外国人看護師・介護福祉士を雇用したい施設は多い。第2として,看護師・介護福祉士育成策として非効率であることである。多額の税金を投入しながら,EPA看護師・介護福祉士候補の資格試験合格率は看護師候補10%程度,介護福祉士候補40%弱にとどまる。日本人看護師・介護福祉士を育成するほうがよほど効率的である。 さらにこの受入れ政策はマクロ面からも問題である。日本人で看護師・介護福祉士資格保有者で就業していない者は多く,人材が有効活用されていない。この論文では,就業を継続できない日本の医療・介護現場の状況を説明し,その改善策を提示する。