著者
廣木 華代
出版者
千葉大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.12, pp.176-190, 2006-03

連邦税リーエンは、支払不能法における連邦債権の優先を起源とし、納税者に対しては、なんらの公示を要することなく有効なものとなるが(IRC6321-6322条)、競合債権者に対しては、通知の登録という「公示」を要件として、その優先が制限される(6323条)。最高裁は、連邦税リーエンとの競合に関し、支払不能法の場合と同様、競合する権利の「完全性」をその優劣の判断基準として採用している。6323条が、競合する第三者の利益保護を目的としたものであることに鑑みれば、登録の先後を基準とした「早い者勝ち」の原則についても、一定の配慮が必要であることはいうまでもない。最高裁は、「成立」ではなく、「完全性」を基準として、その優劣を決するという形で、「早い者勝ち」の原則との調和を図ろうとしているが、判例の状況を見る限り、この試みは、成功したものとはいえず、むしろ「完全性」という「ハードル」をわかりにくいものとしている。しかしながら、このようなハードルの存在自体は、連邦税リーエンという優先権の性質や連邦税リーエンの制度趣旨からは肯定されうるものである。決して「完全」なものとはいえないながらも、連邦税債権という特殊な債権に関し、その特殊性を十分に認識した上で、可能な限り一般原則との調和を図っていこうとした最高裁の試みは、債権競合における利益調整のための基本的な原則として、今なお、その意義を失ってはいないといえるだろう。

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