著者
多ケ谷有子
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.105-139,

イングランド最古の叙事詩Beowulfと渡辺綱伝説のモチーフの類似については、島津久基の『羅生門の鬼』で詳細に論じられて以来、衆目を集め、両者の比較検討も行われるところとなった。本稿は、Beowulfと日本の古典文学における類似するモチーフの比較というテーマの一環として、『古事記』における「国譲り譚」と『出雲国風土記』の「安木郷猪麻呂説話」を取りあげ、類似するモチーフの比較検討を行った。前者については、新来の神/英雄が在来の神/怪物と素手で闘い、相手の手/腕を害し、その結果在来の神/怪物は湖に逃走し、新来の神/英雄に追われて完敗し、国譲りが完成する/斃される、という類似がみられる。後者については、娘/息子を害された父/母が復讐し、斃した相手から片脛/片腕を奪い返し、相手の死骸を曝す、という類似が見られる。本稿では、この類似についての考察を行い、加えて、話型の比較考察をすることの意味を見出し、今後の研究につなげる展望を模索した。

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