著者
深沢 広助
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.107, pp.1-13, 2006

『南海物語』は8つの作品から成る短編集である。ハリケーンや鮫など南海特有の自然の猛威が、人間や建物に与える甚大な被害を活描している。また、白人の優越性、権力、大胆不敵さなどを強調している。しかし、この短編集に登場する白人は、自分の使命に忠実で真摯な宣教師もいるが、アル中のスコットランド人、相手構わず暴力を振うドイツ人、射撃以外は能なしのヤンキー、といった甚だ偏った人物である。一方、南海の島民の場合は、沈着冷静、素朴さ誠実さなどを備えた人物を登場させ、白人の危急を救ったり誠心誠意白人に尽くしたりしている。ロンドンは『南海物語』を通して、白人がその優越性や権力をやみくもに振り回すのはマイナスであり、愚かな行為である、南海の島民が持つ沈着冷静、素朴さといった人間的徳性を兼ね備えるべきだと示唆している。

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こんな論文どうですか? 『南海物語』論(深沢 広助),2006 https://t.co/GfQ1NDGRtD 『南海物語』は8つの作品から成る短編集である。ハリケーンや鮫など南海特有の自然の猛威が、人間や建物に与える甚大な被害を活描している。また…

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