著者
小野 浩
出版者
労働政策研究・研修機構
雑誌
日本労働研究雑誌 (ISSN:09163808)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.15-27, 2016-12

長時間労働の是正は働き方改革の最優先課題である。労働時間を減らし,仕事と生活が両立できるような働き方を実現させるため,国は政策・法律を施行し,企業は報酬制度,インセンティブを改めるなど試みを重ねてきた。しかし日本の正規労働者の総労働時間は1990年代から一向に減っていない。本稿では長時間労働問題の本質は,政策や法制度といった「見える」ところではなく,社会規範や雇用慣行に埋め込まれた「見えにくい」ところにあると考える。長時間労働問題の説明力を高めるには,報酬・評価制度などを取り入れた経済学的アプローチと同時に,社会的コンテクストを考慮したより社会学的な考察が必要だ。長時間労働は日本的雇用慣行の制度補完性とその背景にある文化的特性が生みだした副産物である。問題の原因としては,インプット重視社会,シグナリングに頼る雇用慣行,働き方に組み込まれた集団意識と上下関係,内部労働市場,曖昧な職務内容,男女間性別分業といった要素を明らかにする。最後に,長時間労働を減らすにはどうすべきかを考える。

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CiNii 論文 -  日本の労働時間はなぜ減らないのか? : 長時間労働の社会学的考察 (特集 今後の労働時間のあり方を考える) https://t.co/H7cgn1ycHW #CiNii
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