- 著者
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池田 功
- 出版者
- 明治大学教養論集刊行会
- 雑誌
- 明治大学教養論集 (ISSN:03896005)
- 巻号頁・発行日
- no.496, pp.1-21, 2014-01
石川啄木と尾崎豊は、生きた時代も異なるし、また短歌という定型文学に才能を発揮した啄木と曲をつけて歌う詞に才能を発揮した尾崎という相違もあるにもかかわらず、ともに二六年の生涯であり、またともに最終学年を自主退学し才能だけがものをいう芸術の世界に運命を賭け成功した点で共通している。さらに権威に対して怖れることなく自らの言葉で表現した点や、一〇代や二〇代の夢や希望、そして恋や苦悩や不安などを赤裸々に歌っている点においても共通している。私はこの二人の人生と作品を考察していきたいと思っているが、拙稿「石川啄木と尾崎豊①―二六年の生涯と自主退学―」では、それぞれの二六年の生涯がともに膨張としぼみという時代であったことや、またとりわけ大きな問題となった最終学年における自主退学の真相を時代背景をからめながら考察した。