- 著者
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曾 文莉
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- no.86, pp.165-189, 2017
台湾社会の発展と変化を論じる時,台湾ニューシネマが重要な研究対象になる理由は,台湾意識が見えるからである。台湾ニューシネマに台湾意識が現れる理由は,1977年の郷土文学論戦の影響だと思われる。本稿は台湾の文学思潮の流れに沿って,台湾人のアイデンティティーの変化を観察する。アイデンティティーによって映画に登場する日本の表象も違ってくるので,ニューシネマにおける日本の表象をまとめ,ニューシネマ以前および以降の映画と比較する資料にしたい。 台湾ニューシネマの日本の表象は七つの類型に分けられる:日本人,日本語が話せる台湾人,日本に行く設定,日本式建築,日本語の歌,文化面での日本の表象,そして日本と関係がある話題の登場である。 これらの表象をポストニューシネマと比べて見ると,いくつかのことに気付く。一,日本人役の人物設定。二,言語の使用状況。三,日本語が話せる台湾人の役割。四,「台湾人が日本に行く」目的の変化。五,時間を超えた文化面での日本の表象の登場である。最後に,もう一つ注目すべきことは,映画を撮る視点が中国中心史観から台湾中心史観に変わった点である。