著者
池田 昌広
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 = Acta humanistica et scientifica Universitatis Sangio Kyotiensis (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.50, pp.207-230, 2017-03

書写用の紙は2 世紀初め洛陽で考案された。その理由を通説はこういう。当時の人びとが重くかさばる不便な竹簡に替わるより便利な書写材を追求した結果,紙が開発された,と。しかし竹簡の不便の表白は紙という便利な書写材を入手して以降の文献に限られる。そもそも竹簡の使用歴は過去千年以上あったにもかかわらず,なぜ2 世紀になって新たな書写材が考案されたのか,通説では説明できない。小論は,気候変動による竹材供給の不安定が紙開発の動機であったと考える。竹は高温多湿をこのむ植物である。殷周時代は非常に温暖湿潤で華北でも竹は潤沢に生えていた。しかし六朝時代の小氷期に向かって華北の気候は寒冷乾燥へ変化していった。いきおい中原の竹は衰退していったと推される。竹材は不足がちになり,その状況があらたな書写材の開発をうながしたのではないか。その結論が紙であったと思うのである。

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