著者
眞鍋 貞樹
出版者
拓殖大学地方政治行政研究所
雑誌
拓殖大学政治行政研究 = The journal of politics and administration (ISSN:24239232)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-34, 2018

長く軍政が続いたミャンマーは,2008 年に憲法を改正し,大きく民主化へと舵を切った。そして,2015 年の総選挙により野党国民民主連盟の大統領が誕生するなど,ミャンマーは民主化に向けて確実に歩み始めている。だが,ミャンマーの民主化と発展にとっての最大の壁の一つが,少数民族による自治権の問題である。ミャンマー国内の民主化が成功するか否かのバロメーターは,少数民族の自治権を認めた「連邦制」を樹立できるかどうかにある。ミャンマーにとって,この少数民族問題を解決することには困難なディレンマに直面している。政府が強行に国家統合を図るとすれば,少数民族は政府から離反し,再び対立関係に戻る可能性を孕んでいる。一方で,少数民族の「自治権」を認めれば,民族的に複雑な国だけに国家としての統合を欠いてしまう。本稿では,ミャンマーにおける「統合」と「自治」という解決困難なディレンマを解消する唯一の方法論は,文字通りの民主化であるとともに,少数民族の高度な自治を認めた上で国家に内包される「連邦制」にしていくことしかないとの認識を示すものである。だが,ミャンマーの未来は複雑性と不確実性に満ちている。民主化と連邦制を進める前にも,多くの課題が残されたままなのである。

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