著者
崔 晨
出版者
拓殖大学地方政治行政研究所
雑誌
拓殖大学政治行政研究 = The journal of politics and administration (ISSN:24239232)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.95-110, 2018

"一帯一路"は「シルクロード経済ベルト」(一帯)と「21 世紀の海上シルクロード」(一路)の省略語である。本稿では重点的に"一路"(海のシルクロード)の沿線地域東南アジアを取り上げる要因は地理的、歴史的にみて東南アジアは東西交易の経由地だけではなく、東西交易の拠点として栄えた地域だったからである。歴史では,中国の漢の時代からローマ帝国との貿易がすでに始まった。昔の海のシルクロードでは,ヨーロッパ,中東,アジアなどからの商人はこの地域で交易を盛んに行った。特に15 世紀明の時代に鄭和の7 回にわたり行われた西洋大遠征は,東南アジアを拠点として,アジア以外の地域でも交易が広く行われていたことを物語っている。習近平主席が提唱している"中国の夢"は明の時代を基軸に据えた交易によるグローバル経済圏の確立にあるのではないかと思われる。東南アジアはこの経済圏のひとつの拠点だけではなく,より重要な地域として重要視されている。東南アジアの歴史を俯瞰すると,交易時代,植民地時代といった歴史が現代東南アジア社会の形成に多大な影響を与えたことは事実である。複合社会の形成,人種による経済の格差などが独立後の社会,経済の再建に大きな影響を与えている。そして,複合社会では,華僑華人がこの地域の経済において,インパクトのある存在となっている。70 年代後半,中国は改革開放政策が実施され,東南アジアの華僑華人の資本が中国経済発展に重要な役割を果たした。中国政府もこのことを十分に認識し,"一帯一路"特に"一路"において,華僑華人に中国と東南アジア地域の仲介者としての役割を果たしてほしいとの思いがあると思われる。このような状況のなか,本稿では,中国政府が主導的に提唱している"一帯一路"の構想の背景や地政学からみる"一帯一路"の沿線地域―東南アジアの重要性を取り上げ,東南アジアの華僑華人資本の現状および彼らの資本が今後どのような動きになるか検討するものである。さらに,"一帯一路"が今後東南アジアにどのような影響を及ぼすのか,"一帯一路"の構想が実行されると同時に直面する問題点はどこにあるのかを試みるものである。

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