- 著者
-
越智 秀一
- 出版者
- 天理大学おやさと研究所
- 雑誌
- 天理大学おやさと研究所年報 (ISSN:1341738X)
- 巻号頁・発行日
- no.24, pp.47-68, 2018-03-26
医学というカテゴリーと異なる原理性に基づくセラピーやケアといった分野は、その原理性の検討を必要としている。ルドルフ・オットーが提唱した「ヌミノーゼ」という概念に着目したい。「特殊な」カテゴリーであり、心情的諸要素を伴って、「魂の底」から生まれるものである。カテゴリー論の立場を守り、「魂の底」の「生の深層の意味秩序」と日常的理性を両立し、包括していく重要な視点である。天理教における「おたすけ」は、その包括的視点を備え、セラピーやケアといった分野に示唆を与えるものとして注目される。矛盾や葛藤が生の深層の意味秩序に照らされて、新たなコスモロジーを伴った物語とそこで生きるための「ひながた」によって日常的理性の新たな地平を拓く。その際、重要なのはほとんど音楽に近い肉声(言語レベル)での語り(節)による心の深層のイメージのはたらきと、日常的時間意識を超えてイメージが動くのを「待つ」ことである。