著者
梅山 聡
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.222-211, 2019-03-31

「ねむり看守」は、鏡花の実質的に最初の本格的な口語体小説として評価されるべき作品である。「ねむり看守」では、看守の老人が囚人たちに物語を語りきかせる情景が描かれる。看守の語りには口頭話法に近いくだけた口語体が用いられており、かつその語り行為には、哲学者・坂部恵の定義する「はなし」と「かたり」との両面にわたる複雑な二面性が認められる。それによって、いわば「はなし」を装った「かたり」とでもいうべき高度に屈折した物語言語が生み出されている。この看守の語りは独立した小説表現を形成し得る質を有するものであり、そのような口語体の語りは、それ以前の鏡花作品には見出されない。ゆえに「ねむり看守」は、鏡花の初期創作活動において重要な意義を有する作品なのである。

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梅山 聡 -  「はなし」を装う「かたり」 ― 泉鏡花「ねむり看守」論 ― https://t.co/FQ5RNKJdGE

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