- 著者
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馬場 憲一
- 出版者
- 法政大学現代福祉学部現代福祉研究編集委員会
- 雑誌
- 現代福祉研究 (ISSN:13463349)
- 巻号頁・発行日
- no.19, pp.5-26, 2019-03
戦後日本の平和と繁栄は第2次世界大戦の惨禍の上に築かれたものとの認識で語られている。その惨禍の一つに挙げることができるのが、戦時下における「学徒出陣」であり、現在、その学徒出陣の事実を現代の若者たちにどのような形で伝えていくことができるのかが大きな課題と言える。そのため本稿では戦後50年を契機に各大学が実施してきた学徒出陣調査の取り組みと成果を述べ、法政大学の学徒出陣調査事業から明らかになった出陣学徒兵の全体像を示すとともに、学徒出陣調査事業の最終報告会における座談会で学徒出陣に関わるエピソードを聞いた学生たちがどのように受け止めたのか彼らが作成した感想文を分析し、学徒出陣の記憶がどのように受容されていたのかを検証した。その結果、出陣学徒の記憶が様々な形で認識され受容されている状況が明らかとなり、学徒出陣を体験した者の個々の記憶がそれを聞いた若い学生たちにたとえ記憶が変質し伝承されたとしても、その記憶が受容されることによって大きなインパクトを与えてきている事実を明らかにした。