著者
平山 令二
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.89, pp.169-188, 2018

1926年にベルリンに生まれたユダヤ人ラルフ・ノイマンは,ナチス政権の反ユダヤ政策がエスカレートする時代に青少年時代を過ごし,ユダヤ人の強制移送が進むなか,母と姉のリタといっしょに潜行生活に入った。母はゲシュタポに逮捕されたが,ラルフと姉は,同じ潜行ユダヤ人,社会民主主義者,キリスト教徒の抵抗グループ,農民など多くの人々の支援を受け,一旦は逮捕されるという危難もあったが,偶然的要素と必然的要素のからみあうなかで無事に生き延びて終戦を迎えることができた。救済者たちは自らの生命の危険も冒して,ラルフに住居,食料,教育など様々な形で支援を行った。改めてユダヤ人救済のために勇気を奮い,知恵を尽くしたベルリン市民が数多くいたことを確認できるのである。

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