著者
韓 娥凜 Han Ahreum
出版者
大阪大学大学院文学研究科 日本語学講座 現代日本語学研究室
雑誌
現代日本語研究
巻号頁・発行日
no.11, pp.72-90, 2019-03-31

政見放送は,放送という公の場を借りて行う選挙運動一つである。本稿では,選挙の際に日韓の有力候補が行う政見放送を分析し,トピック構成と聞き手設定の相違について考察した。分析の結果,日本では,当選した後の政策を説明するトピックが多かったが,韓国では対立する政党の候補への批判や相手からの政治的攻撃を反駁するトピックが多いことが分かった。そのため,日本では最初から最後まで有権者が主な聞き手として設定されているが,韓国では有権者の他にも対立する候補がもう1人の聞き手として設定される傾向がみられた。同じ目的で行われる政見放送であっても日本は「政治家-有権者」の単一聞き手設定による情報伝達重視の談話を,韓国は「政治家-有権者-対立候補」の多重聞き手設定から感情共有重視の談話を展開していくことが明らかになった。

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